所得の区分
副業の所得は雑所得か事業所得か——国税庁の通達は「社会通念上事業と称するに至る程度」で判定し、帳簿書類の保存がなければ業務に係る雑所得と書いていました
副業の収入が少しずつ増えてくると、確定申告の書類を前にして手が止まる欄があります。所得の種類を選ぶところです。
原稿を書いて受け取った報酬、週末に続けている仕事の売上。これを事業所得として書くのか、雑所得として書くのかで、申告書の書き方が変わります。
インターネットで調べると、「帳簿を付ければ事業所得になる」という説明にも、「300万円以下は雑所得」という説明にも出会います。どちらも言い切りに見えて、どこまでが決まりなのかは分かりにくいところです。
国税庁は、この区分について令和4年10月7日に所得税基本通達を改め、その解説も公開しています。
最初の記事では「20万円」の申告の線を、2本目の記事では労働時間の通算を読みました。今回は、所得の区分の話です。
開いたのは、国税庁の「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」と、タックスアンサーNo.1500「雑所得」です。どちらも2026年9月27日に読んだ文を引きます。自分の副業がどちらに当たるかは、この記事では決めていません。
・タックスアンサーは、副業に係る所得(原稿料など)を雑所得の例に挙げている
・通達は、事業所得かどうかを「社会通念上事業と称するに至る程度」かで判定するとしている
・帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得(収入300万円超で事業所得と認められる事実がある場合を除く)
・帳簿書類を保存していても、「僅少」や「営利性が認められない」場合は個別に判断される
・業務に係る雑所得の損失は、他の所得と損益通算できない
副業の所得は、そもそも雑所得なの?
副業のお金は、全部「雑所得」になるの?
タックスアンサーNo.1500は、雑所得を、ほかのどの所得にも当たらない所得と説明しています。その例の中に、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が入っていました。
雑所得の中の「業務に係るもの」については、注でこう定義しています。
(注)業務に係るものとは、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものをいいます。
通達35-2も、業務に係る雑所得の例を並べていました。その一つがこの行です。
原稿、さし絵、作曲、レコードの吹き込み若しくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料又は講演料等に係る所得
ただし、この例示には「事業所得又は山林所得と認められるものを除き」という前置きが付いています。例に挙がった仕事でも、事業所得と認められれば、そちらに入ります。
事業所得かどうかは、何で決まるの?
「事業」と言えるかどうかは、誰がどう決めるの?
通達35-2の(注)の前段です。
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
解説は、この判定について、最高裁判所の昭和56年4月24日の判決と、東京地方裁判所の昭和48年7月18日の判決を引いていました。営利性・有償性、継続性・反復性などの諸点をあわせて見て判定する、という書き方です。
判定の言葉そのものに、金額は入っていないのです。
帳簿を付けていれば、事業所得になるの?
帳簿を付けて保存していれば、それで事業所得になる?
通達35-2の(注)の後段です。
なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。
書かれているのは、保存がない場合は原則として業務に係る雑所得、という向きです。保存があれば必ず事業所得になる、とは書かれていません。
解説は、帳簿書類を記録・保存している場合について、社会通念での判定において事業所得に区分される場合が多い、と書いていました。そのうえで、保存していても個別に判断する場合を2つ挙げています。
帳簿があっても、事業所得にならないのはどんなとき?
「個別に判断」されるのは、どんな場合?
1つ目は、収入金額が僅少と認められる場合です。
例えば、その所得の収入金額が、例年、300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。
「例年」の意味も、すぐ下に書かれていました。
※「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。
2つ目は、営利性が認められない場合です。
その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます
「考えられます」という結び方で、どちらも例の形で書かれています。この2つに当たると必ず雑所得になる、とまでは書かれていませんでした。
雑所得になると、何が違うの?
事業所得と雑所得で、申告のあとに違いは出るの?
タックスアンサーNo.1500の注意事項です。
雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできません。
副業が赤字の年に、その赤字を給与所得と差し引きできるかどうかは、区分で変わるということです。
書類の保存についても、収入の大きさで決まりがありました。
令和4年分以後の所得税において、業務に係る雑所得を有する場合で、その年の前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える方は、現金預金取引等関係書類を保存する必要があります。
解説は、通達の「収入金額300万円」が、この保存の義務の線を踏まえたものだと書いていました。
この記事で確認したこと
・副業に係る所得(原稿料など)は雑所得の例に挙がっている(No.1500)
・事業所得かどうかは「社会通念上事業と称するに至る程度」で判定(通達35-2)
・帳簿書類の保存がない場合は、原則として業務に係る雑所得(収入300万円超で事業所得と認められる事実がある場合を除く)
・保存していても、収入が僅少(例年300万円以下で主たる収入の10%未満など)や、例年赤字で取組が無い場合は個別に判断
・雑所得の損失は、他の所得と損益通算できない
よくある質問
帳簿を付け始めれば、その年から事業所得になりますか
通達が書いているのは、保存がない場合は原則として業務に係る雑所得になる、という向きでした。保存があれば事業所得になる、とは書かれていません。判定は社会通念によるとされているので、迷うときは税務署に相談してください。
収入が300万円以下なら、必ず雑所得ですか
解説の「僅少」の例は、例年300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満の場合でした。300万円以下というだけで必ず雑所得になるという書き方は、解説の中に見当たりませんでした。
副業の所得が20万円以下なら、区分は気にしなくていいですか
所得税の確定申告が要らない場合の「20万円」と、住民税の申告は別の話であることを、最初の記事で読んでいます。区分の話は、申告をするときに書き方として出てきます。
この整理が変わる条件
- 国税庁が、所得税基本通達35-2やその解説を改めた場合(本記事は2026年9月27日に読んだもの。通達は令和4年10月7日の改正)
- タックスアンサーNo.1500が改められた場合(読んだ頁は「令和8年4月1日現在法令等」)
- 副業の所得が、資産の譲渡や山林によるものの場合(通達は、資産の譲渡から生ずる所得を別に書いています)
出典
- 国税庁「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」(「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)・令和4年10月7日) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/pdf/02.pdf
- 国税庁 タックスアンサー No.1500「雑所得」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1500.htm
区分に迷ったら、まず帳簿書類を保存しているかどうかから確かめてください。
上の出典を引いて確かめた日: